初めて会う人に「なんのお仕事されているのですか?」とか「ご職業は?」と聞かれることがある。世間一般的によく交わされるこの会話。でも僕はこの質問に対してどう返そうかといつも結構悩む。まずもって「仕事」と聞かれるのと「職業」と聞かれるので答え方が全然変わってくる。僕の場合の悩みの核は、仕事は答えられるけど職業は答えられないということ。音楽や美術に関わる過程で得たアイデアやクリエイティビティを、特定の都市や特定の分野の活動の中に、ぽーんっと投げ込むことで、日常生活をもっと面白く再認識するためにあらゆる表現手段を尽くして動く。これが自分にとっての仕事なのだが、おそらく世間一般にわかるような職業としてそれを説明しようとなると、その前述した表現手段のことを説明しないといけなくなる。それが場合によっては「アーティスト」という職業/肩書きであったり、「クリエイティブディレクター」であったり、「なんちゃらコーディネーター」であったり。まるでカメレオンの様に、その時々の現場に相応しい職業/肩書きが周囲によって決定されていく。そしてどうやら世間一般的には、先にその人の職業を出会いの入り口として捉えて、そこから深く付き合うことになれば仕事という領域に関わる、という順番らしい。
僕はずっと上述したようなことを不思議に感じてきた。不思議というライトな感覚というよりはむしろ困ったなっていうのが正直な感覚。
じゃあ仕事を達成するために、表現手段である職業をやたらと色々抱えている人間は、どうやったら自分の仕事の全体像を人に伝えることができるのか。そういったことを考え続けて数年。ちょっとわかってきたことがある。まず第一に、世の中にはこういった働き方をしている人間が一定層存在するということ。そして第二に、そういった人間はなぜかどこかで人脈が繋がっていたりすること。そして第三に、そういった人間の多くは自分の複雑化した仕事を社会に上手く発信するために、何かしらのアウトプットを拵えていること。次号以降は、この三つ目について、具体例を交えながら言及していきたい。今回このフリーペーパーを含めた「C.I.Y」というプロジェクトに直接関わってくるとことなので。
C.I.Y 制作エピソード #1
まず「C.I.Y その仕事 そのアイデア 交換講座」の目的は、とにかく領域を超えた仕事をする人たちをゲストに招き、そのアイデアとクリエイティビティを交換しあい、参加者が自らの仕事や活動にそれを使い直す といったこと。一文がくどくど長くなったが、そういうことを実現しようと思ったら、僕が興味を持っている活動分野のゲストだけを招くのは、ちょっと知見が狭くなるなと思ったのだ。そこでもう一人、ディレクターが必要だと思い、西天満でお仕事するoooの後藤哲也さんに「一緒にお仕事しませんか?」ってお声かけした。なんせ後藤さんのプロフィールには「“働き方のこれから”について考え、個と個をつなぐ場と機会づくりを行う」などと書かれているではないか。しかも彼は、外国人との異文化交流という視点も持ち合わせているので(ここは僕にとって不案内な分野)ゲスト層のバリエーションが広がるなと思い、ただいま共同ディレクション中。
まず僕ら二人が最初に会いに行ったゲストは、Re:Sの藤本智士さん。東京と大阪を行き来する彼の空いた時間を狙って、梅田の新阪急ホテルの喫茶店にて。ちょうど彼が編集を手がけた「ニッポンの嵐」という書籍が各地で話題になっていた時。お忙しい時間を縫ってお越しいただきまずは本当にありがたかった。僕が嬉しかったのは会った瞬間に藤本さんが「アサダくん!やっと会えたね!」と言ってくれたこと。こっちの活動をずっと陰ながら見ていてくれてたというだけで、どれほど救われるか。彼は京都で購入したとっても素敵な手づくりの筆箱を見せてくれながら、今回の企画趣旨を瞬時に理解してくれた。藤本さんとの会話の中で最も印象に残ったこと、それは、彼が編集という手段を徹底的に自分の表現として捉えて次から次へと新しい仕事のフェーズへと向かっていること。「編集」という行為は、一般的には「主観的な個人の表現」というよりは、「客観的でフラットな作業」というような印象をもたれやすい。しかし彼が生み出したメディアに触れれば、彼が編集に対して独自の思想を持って接していることがありありとわかる。元々小説家を目指していたという事実もすごくすんなり受け入れられる。まず是非、雑誌「Re:S」を読んでほしい。(現在は休刊中だけどamazonとかで手に入るし、中之島4117でも読めますよ)そして僕はいま、藤本さんのことを考えながら、ちょうどtwitterで「アルバムエキスポ」という藤本さんが梅田のHEPHALLで手がけているイベントの情報が飛び込んできた。いいシンクロニシティ。来週、行ってみようっと。
0 件のコメント:
コメントを投稿